新橋 「韓国家庭料理 高馬宇」 ボンクラ座礁酒場

恐らく、身近に在日朝鮮人・韓国人の知り合いなんかが居ない大概の日本人は初めての朝鮮料理っていうと焼き肉、あるいは惣菜としてのキムチっていうことになるんだろうか。

自分の場合もやはりそうで、何というかありがちであるが、地元の焼肉料理屋だった。日本人の経営ではあったが、埼玉のソチラのコミュニティがあるところの大宮の在日系との付き合いがでもあったらしく、内容は料理・肉の質共に妙にしっかりしていた店で、確か名前は「千里馬」で“チョンリマ“と読ませていた。片田舎わりにはそれなりに本格派だったんで、路地に面した小さな店だったが、週末などはかなり繁盛している店であった。その店は自分が中学生の頃に諸事情により閉じてしまったが、子供の頃にアレルギーやらナニやらで食わないものが多かった自分が、肉の美味さを覚えたのはそこだったので印象深く覚えている。パイプのテーブルが並んだ殺風景な店内も妙に好きだった。
新橋の夜・その一
その後、肉の味を覚えた自分を、父親はよく東上野のコリアン街に連れて行くようになった。今はすっかり乾いた場所になってしまったが、あの頃の東上野は蒸気でも上がってるような温かい湿っぽさがあり、その雰囲気の中で食うソッチの料理は特別な感じがした。
しかし、今思うとこのどちらもが“朝鮮料理”って大きなくくりではあるけれど、基本“在日朝鮮人・韓国人料理”だったんだよね。焼肉の起源なんかもよく言われるところではあるけれど、日本仕様になっているというか、なんというか。それにしても、最近ドストレートなものは見なくなったんだけど。
新橋の夜・その二
んで、しばらく空いてキチンと“韓国料理”を食うようになったのは10年ほど前。犬を食ってみたいということで、新大久保の余り外向けでない店に行ってみたのだ。“外向けではない“と言ったが、当時は韓流も嫌韓もまだ影も形もなく、新大久保が韓国一色ではないモロモロな在日外国人がやたらと居るカオスな街だった頃だ。
新橋の夜・その三
その店も見事なくらいに日本人の客が居ない店で、飯もそれなりに美味かったんだけど、テーブルに大量に料理を並べて食わない韓国人達を見ている方が面白かったんで、そっちの方のどうでもイイ事ばかり濃厚に覚えている。そんなこんなで以降、いわゆる(在日ではない)“ニューカマー”の韓国人の店ってのがやたらと増えていったんで、ちょこちょこと食べる機会は増えたものの(東上野ではない上野とかね)、正直味的にはどこもどんぐりの背比べというか、過去の在日朝鮮人・韓国人料理ほどにはガシーンとハマらずに今に至る、といったトコロだったりする。

こういった、「ソッチ方面の食い物とワタシ」みたいなのはそれぞれお持ちかと思われるんだけど、そこで今回の店っつーことになるわけだ。

場所は新橋。CUE氏オススメということなんだが、実は前に一度来たことがあるのである。しかし、何だかバタバタしたままドヤドヤとすぐに別の店に移動してしまったりして、個人的記憶としてはケジャンが美味かった以外はどこぞへと、後の店の記憶と共に流れ去ってしまったといった感じで、今回言わばキチンと真価を確認にといったわけである。んなわけで、何か関係ない写真が、と思ったかもしれんけどみんな新橋です。
新橋の夜・その四
というわけで、京浜東北線で新橋~鳥森口へ出てCUE氏と落ち合い、とっとと店へ。以前来た時は新人・人事異動系のリーマン・OLだらけで何かふわふわした雰囲気であったが、今日の新橋はオヤジ臭も濃くイイカンジである。おっさん臭くてイイというのも変なもんなんだが、そういう街なんだからしょうがないのだ。
目的の店「高馬宇」は新橋西口通りをチョイと行ったトコロにある。外観は如何にもなニューカマーな韓国料理店に見える。何か理由があるのか知らんが、最近の韓国料理店って何故かどこも大概が板壁で、ジョイフル本田みたいな巨大ホームセンターの見本ログキャビン風(分かんのかこの説明)なんだよね。が、この店は新橋のソッチ方面の店としてはそれなりに古いと聞く。となるとガチガチの“純韓国料理”でもないっつーことかな。
店に入ると2階に通される。前回も確か2階だった。ちなみにこの店、それぞれ階は余り広くはないが3階まである。宴会等にも対応できるように用途に応じて、分かれているようだ。
高馬宇・2階
客はそれなりに居るが全員がリーマンで焼き肉を食っている。この日、自分は紳士服のミユキのテーマを歌ってもオカシクないくらいボワボワのフリースを着ていたが、そんなヤツは当然居ない。筋肉質でホモソーシャルな営業系社会人ってことで、自分らとは真逆の方々であるわけだが、焼き肉文化ってのはこういう人達が担ってきたというのがよく分かる風景である。コッチは今回真逆よろしく、惣菜方面(のみ)を駆け抜けるのである。
高馬宇・ビールと突き出し
と、いつもの様にとりあえずの生となるわけだが、突き出しのキムチ風のもやしナムルがすでに美味い。ビンビンに辛いけど。ついでにビールの方が冷えすぎてて、こっちもビンビン薄氷が張っているような状態だったが、ビンビン同士で帳消しだ。料理を持ってくる店員さんは正しく、日本語が片言である。
高馬宇・チェンジャ
続けてチャンジャとキムチがやってくる。突き出しと一緒で盛るだけだからね。こちらもどちらも美味いが、チャンジャの飯食いたくなるっぷりに驚く。くっそ熱い飯が欲しい。なるほど、オススメのというのはこういった辺りか。
高馬宇・チヂミ
と、ビールがグイグイ進む中、チヂミが到着。どうもそこらの店だと粉食ってるのか、油食ってるのか分からないようなチヂミが多く、途中で飽きてしまったりするが、これは違う。中はしっとり、外はカリリとしてガシガシと食える。
高馬宇・チャプチェ
それほど間が開かずにさらにチャプチェが繰り出されてくる。基本惣菜ばっかりたのんでいるので早いんである。正直、いままで当たったチャプチェは一口食って、そのまま冷えていくというような料理だったし、これもそうなんじゃね?と期待しないで口に入れてびっくり。なんというかコレばっかりだがストレートに美味い。ここでなんとなく理解したのは、ここはよくあるニューカマー系の韓国料理屋と違って味の深みがあること。日本風に言うと“ダシ”が効いてるっていうのかな。今までニューカマー系の店で食べたそれに足りなかったのはこの辺りだったんだね。
高馬宇・マッコリ
ここで、正しい流れとしてビールからマッコリへと移行。アルマイトのやかんにうつわというスタイルでやってくる。韓国では徴兵制があるため、ある種共通の郷愁のようなものとして、それを思い出させるようなこういったスタイルで出す、みたいなことを聞いたことがあるが、実際どうなんだろうか。
高馬宇・メニュー
と、メニューを見てみると「隊長チヂミ」とか「部隊チゲ(インスタントラーメン入れるヤツ)」あるわけだし、やはりそういった部分の大衆化なんだろうな。沖縄よろしくスパムも結構登場するしな。よく考えたら日本のカレーも元々は軍隊食として普及したナンテ説もあるんだった。そうそう、マッコリは当然飲みやすく、スコスコ行けるのでちょっとヤバイ感じある。それにしても、ちょっと前と比べて種類も増えたね。
ついでに焼き肉のメニューを見てみると妙に安い。CUE氏に聞くと皿が小さめなんだとか。それはイロイロと種類が楽しめて良いかもしれない。
高馬宇・スパムチヂミ
マッコリを飲みつつ、追加で来たスパムチヂミを正しく喰らう。スパムのしょっぱさがマッコリのビックル系な甘さと妙に合う。
高馬宇・2階
この頃には他の客は帰ってしまって、貸切状態となる。焼肉食っていた営業部族な方々はキャバクラ的な場所に繰り出していったのであろうか。そういった熱源が無くなった殺風景な店内ってのも良いもんである。人が居なくなったトコロで打たれて死ぬ組幹部ような気分になったりして。なんだそれ。どんどん飲んでるマッコリが効いてきたのだろうか(やかん2つ目)。
ハチノスの煮込み
ハチノスの煮込みもしみじみ美味い。これもダシが効いてるねって感じだ。
高馬宇・馬肉のユッケ
さらに馬肉のユッケを食ってーの~
高馬宇・トッポキ
最後のトドメはトッポキである。まぁこれにハズレはない。最近は祭りの屋台なんかでも見るが、韓国でも諸々の事情からキムチを避ける人でも、トッポキの支持は高いという。まぁ、全員が辛いもん好きなわけじゃないだろうしな。このトッポキも辛さは控えめでツマムのにちょうどイイ。それにしても、どんどん来るんでジェットコースター的に食ったような気がする。
ということで、妙な達成感を胸に店を出る。ここでCUE氏が予約に関する話を女性店員さんに聞こうとしたら「ワタシココ来て一週間だからワカラナイヨ」「そりゃ分かんないよね」みたいなやり取りがあったりして、見事にオチが付いた。コマ劇場だったら回転して岩崎宏美が出てくるトコロだ。ヤバかったな。
高馬宇・看板
というわけで、今回の韓国家庭料理「高馬宇」。一見ガチガチの韓国料理店かと思ってしまうが、“家庭”と付いているだけに、ナカナカ内容がフレキシブルというか、多少店を構えて長いだけにやや日本人に合わせってーのっていう、微妙な辺りを狙ってくるニクイ配球の店であった。CUE氏がタマに食いたくなるというのが良く分かった。まだ食ってみたいものがあったので、ぜひマタ来たい。当然、惣菜がオススメではあるが、座敷もあって、小盛りの焼き肉もあるってことで、コッチの食い物入門編から、宴会にと用途はイロイロありそうである。新橋新橋してないってところで、この辺りの飲み屋にマンネリ感を持っている人もオススメしたい。ってことで今回は以上。

韓国家庭料理 高馬宇(コバウ)
住所:東京都港区新橋3-18-4
電話:03-3431-3921
営業時間:17:00~23:00 (L.O.22:30) ※都合ニヨリ変更アリ
定休日:日曜日、連休の最終日

と、店の紹介オワリなんだが、何故か猛烈に飯が食いたくなり(さっきのチャンジャの残留思念か)、牛丼でもということになる。オマエラ散々食っただろ。
が、新橋の吉野家は満員。吉野家店舗で最大の売上を誇る有楽町店なら大丈夫だろうと、歩いて行くことにする。そこまでして食いたいのか。何でこうなっちゃったのかというくらいにペラペラ感が増していく銀座コリドー通りを抜けて、ずずいと店に到着。時間的なものもあり、やや謎客層の中で牛丼を喰らう。で、当然のように食い過ぎで苦しむことになり、タイトルに寄せる形でシメとなったのあった。分かっちゃいるけど、ヤメラレナイ。

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