本郷三丁目 名曲喫茶「麦」 カフェブックマーク

元々「喫茶店」の先祖にあたるフランスの「カフェ」やイギリスの「コーヒーハウス」では店内で音楽を演奏したり、客達が歌うというのは通常のことでだったそうです。
その伝統を引き継ぐ形でいわゆる「名曲喫茶」と言われるものが生まれたのは昭和の始め頃。レコードの大衆化が始まり、さらに電気蓄音機の普及が進んで行ったことから、それで客に音楽を聞かせるという形態の店が増えていきました。普及が進んだといっても電気蓄音機の値段は高いものだと家一軒と代わらないくらいしたそうですから、庶民には高値の花。蓄音機のある喫茶店はそういう庶民が音楽に触れる事が出来るモダンな場所だったわけです。
そして、戦後になって1970年代の始め頃までは、やはりレコードをそうそう買うことの出来ない学生達を相手にする形で「名曲喫茶」という形態の喫茶店は生き残ることになります。
名曲喫茶「麦」
どうもスターバックスみたいなチェーン系のコーヒーショップは落ち着かなくて、そういう昭和の匂いが残る喫茶店に飛び込んでダラダラとするのが好きなんですが、今回から「カフェブックマーク」と銘打って最初に紹介するお店は、そんな昭和な匂いたっぷりの名曲喫茶「麦」です。
名曲喫茶「麦」・階段
メトロ本郷三丁目駅を出て、本郷通りへ向かう小道を歩いていくと右側に手書きっぽい文字の看板が置かれていて、そこが店の入り口。地下へ降りていく階段は装飾がレトロで何かウサギを追って別世界への穴に飛び込むアリスのような気分になります。
名曲喫茶「麦」・CD棚
階段を降りたところにCD棚があり、そこから店は左右に分かれていて、右手は椅子席、左手はソファー席でやや雰囲気が違います。カメラを持って入った今回は落ち着ける度の強いソファー席の方へ。スプリングを思いっきりお尻で感じられる味わいのあるソファーに腰掛け、ちょっと暑い日だったのでコーヒーフロートと自家製プリンを注文。やっぱし、こういうものには赤いチェリーが入っていないとね。
名曲喫茶「麦」・ソファー
部屋の隅に大きなスピーカーが二つ(フォスター製)客席を向かうような形であり静かにクラシック音楽が流れていています。名曲喫茶と言っても、このお店は会話等の音に厳しくは無く、今回も隣の席でおっさん達が「債権が…」「株主が…」みたいな切羽詰った話をしていました。気をつけてもらいたいのはこの店、分煙されていないので平日の午後なんかにくると、仕事をサボりに来たおっさんパラダイスになっているので、タバコが苦手な人は要注意。
名曲喫茶「麦」・スピーカー
この店がすばらしいのは店の雰囲気もそうですが、コーヒーが250円と非常に安いんですよ。食べ物との組み合わせだと150円で飲むことができます。朝7時からやっているので、モーニングもおすすめ。ビール、ワイン、ウイスキーも注文出来て、平日は夜11時まで営業。

名曲喫茶「麦」の創業は昭和30年(1950年)。店の名前は1933年にオーストリアで作られた映画『未完成交響楽』(シューベルトの交響曲『未完成』がテーマ)で、シューベルトと貴族の娘が逢引をしていたのが麦畑だったことから。東大が近いということもあり、一昔前は音楽部が部室のように使っていたそうで、当時の管弦楽団の写真や演目などが飾られています。ご年配の常連さんも多いようなので当時から通っている人が多いんでしょうね。
名曲喫茶「麦」・東京大学音楽部管弦楽団演奏会演目
「名曲喫茶」という形態の喫茶店は、1970年代半ば頃からレコード・録音技術の一般化と、バブルへ向かっての土地高騰という二重の打撃を受けて淘汰されていくことになるわけですが、「麦」も中野翠のエッセイに書かれてあるようなことがいろいろとあったようです。
そういう過去が無かったかのよう、現在の「麦」店内ではクラシックと共にゆっくりとした時間が流れています。

名曲喫茶「麦」
東京都文京区本郷2-39-5
電話:03-3811-6315
基本無休
月曜日から土曜日:7:00~23:00
日曜日・祝日:8:00~20:00
※地下なので携帯の機種によって電波の強い弱いがあります。

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