ロバート・アルトマン『ナッシュビル』 まだ間に合う!! 新宿武蔵野館へ急げ!!

ロバート・アルトマン監督の1975年作のこの映画、音楽の権利関係などで日本ではソフト化がされず、特集上映などで劇場にかからない限りなかなか見る機会が無く、今回の新宿武蔵野館での上映で念願かなって見ることが出来た。

物語は大統領候補が選挙キャンペーンに乗り込んだアメリカ南部のカントリー&ウェスタンの街・ナッシュビルを舞台に主要人物24人が織りなす群像劇、と簡単に説明するとこうなるが、一筋縄にはいかない。

群像劇というと登場人物達が繋がっていき綾をなしていき大団円を迎えるものだが、この作品に関してというと登場人物達が有機的に絡み合っていくというのはあまり無く、それぞれが勝手に行動する断絶した群像劇という印象を受ける。

そして全員が集合したフェスティバルの会場に現れる「狙撃手」。通常の群像劇、例えば同じアルトマンの後年の傑作『ショート・カッツ』における 「地震」、またはアルトマンの衣鉢を継ぐポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』における「カエル」などは登場人物達に混乱をもたらすがそこから 救済や再生を導き出す契機の役目を果たしている。しかしこの「狙撃手」は登場人物達をカオスに陥れたままであり、彼らは困惑したまま立ち尽くすか黙って 去って行くのみである。

ラスト、巨大な星条旗をバックに歌われるのは”It Don’t Worry Me”。「気にしてもしょうがない。自由じゃないと言われても」

現実の人間はやはり断絶した存在だし、苦悩や挫折を他者と共有するなんてそうそう出来る事ではない。他者との繋がりが希望をもたらす大団円を描く のが優等生的な群像劇なら、この映画は現実をリアリスティックに描いた異端児であり、それ故に傑作なのである。人間は一人で苦しんで不安になりながらも 「気にしてもしょうがない。なるようになるさ」と口ずさんで生きてかなきゃならないのだ。1975年のアメリカと現在の日本、何故か同じ空気を感じるなあ。

新宿武蔵野館での上映は9月9日まで延長になりました。今回逃がしたら次はいつになることやら。万難を排して見にいくべし。

[googleMap name=”新宿武蔵野館” width=”95%” height=”400″]東京都新宿区新宿3丁目27−10[/googleMap]

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